ここが終点と思っていても、おかしなことに、いつもいつも、終わりが始まりだ
Pelikan スーベレーン M800(緑縞)

Pelikan スーベレーン M800(緑縞)

スーベレーンM800
万年筆にはまり始めてから早数年、踊り場に出ちゃった感じ。
きっかけは去年の誕生日、金ペン堂さんでドルチェビータのソワレ(黒)を買った時のことだった。
当時はご主人が店頭に立っていて、試し書きもさせてもらって、はいそれでは保証書を書きますからね、って所になって、ご主人が取り出したのがスーベレーン(おそらくM800)の緑縞。すらすらと日付を書き込んでいる姿に一目惚れしたわたくし。
ソワレを買う前に散々ペンカタログやら店頭展示品やらを吟味していたが、スーベレーンに関しては「ふうん」としか思ってなかった。デザインで何かが目立っているわけでもなし、緑って派手だなあ、くらいの認識だった。それまで、ボディは黒が基本だった。
しかし、誰かが手にして、使って初めて生きる形、と言うのがあるのだと思った。ガラスケースの中に並んでいた時とはまったく違う顔を、そのスーベレーンはご主人の手の中で見せていたのだよね。
そして1年、今年の誕生日、私はその時の決意どおりに再び金ペン堂を訪れたのだった。ご主人はいなかったが、息子さんと奥さんが店頭に立っていた。すごく……混んでます……! 前の人がいろいろする間、万年筆を眺めて待つ。楽しくて仕方ない。つーかデルタの新作欲しいよ! Via Veneto(ヴィア ベネット)! もったりした赤のボディーが素敵。「来年はこれでいい」と言ったら怒られた。
プレゼントなので、旦那がニコニコ現金決済してくれたのだが、旦那が中身の乏しい財布から断腸の思いで取り出した福沢諭吉を、ちょうどおじいちゃんらしき人と一緒に来店していた5歳くらいの女の子が目を丸くして見つめていた。なんかものすごく申し訳ない気分になった。
スーベレーンM800
ペン先はFとMで散々迷った。私は小さい字をちまちま書くので、実用性を考えればFのほうがいいに決まってる。しかしMのがっしりした書き心地は捨てがたい。Fはペン先全体がやわらかくてふわふわしている。
ほんと迷った。半年分くらい悩んだ。結局、息子さんが『細めに調整したM』のペン先を探してきて、ペン先を入れ替えてくれた。Mの書き心地はそのままに、自体は心持細め。FとMの中間くらい。
でもまだ迷ってた。Fのふわふわ感も捨てがたいんじゃないかと思い始めていたからだ。これはもはや業ですね。結局Mにしたが(持ってるペンはFが多いので)、Fもよかった。できれば2本とも欲しかった……!
さすがM、ペンポイントが広いと言うか平坦で、紙に当てるのにちょっとコツがいる。これはおいおい慣れていくだろうが。同じMでも、デルタのソラリスはもっとペンポイントが丸くて、字も丸っこい(ユーロボックスさんで調整済み)。スーベレーンはカリグラフィーペンみたいに、横線と縦線で太さの違う面白みがある。
スーベレーンM800
キャップの子ペリカンは1羽。
フルハルターさんのサイトで『ナンバーワーン!』の称号を戴いているスーベレーン、確かに持ったときのバランスが最高。重すぎることも、軽すぎることもない。適度に手のひらに馴染む重さ。長時間書いても疲れにくいと思う。
ペン先はがっしりしているが、実は結構柔らかい。Fのふわふわ感はないが、これがM1000だったりしたらもう凄いことになっちゃうのかしら? などと想像してはニヤニヤしている。
ちなみに、インクはモンブランの黒を入れてもらった。万年筆のインクはペン先に馴染むから一度決めたら変えない方がいい、と金ペン堂のご主人もおっしゃっているし、どうせメインは黒しか使わないのだから、1つにまとめた方が楽だし懐にも優しい。「モンブランの黒が一番いいですから」と息子さんも言ってた。他のあんまり試してないから分からないけど、モンブランブラックで書いた文字が乾いたときに出る濃淡は確かに美しいと思う。ちなみに、匂いはデルタのボトルインクの方が好き。
帰りに上島珈琲店でまったりしながらも興奮の冷め遣らない私は旦那に向かって浅学な万年筆の薀蓄をまくし立てていたが、興味もないのにそれを黙って聞いていてくれる旦那はいい人だなあ、と思った。来年はデルタのヴィア・ベネットでお願いします。

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