ここが終点と思っていても、おかしなことに、いつもいつも、終わりが始まりだ
モンブランとわたくし

モンブランとわたくし

モンブランのマイスターシュテック149を使っている。丸善本店で散々試し書きをした結果、明らかに私の手の大きさに合っているのは146の方だったが、つい149に手が伸びてしまった。作家の開高健が使ってたのもこの149だと言うのが決め手になったのかも。ミーハーだから。開高健、実は読んだことないけど。

書くことは、野原を断崖のように歩くことだと思う

開高健が言ったこの言葉(うろ覚え)がどうしても忘れられず、結局私の手元には、自分には大きすぎる149が残されることになったわけだ。じゃじゃ馬ならし、と言うか、これを使いこなせるようになるまでにはまだ時間がかかりそう。
モンブランは初の吸入式で、あのハイヒールみたいなボトルインクを開けた時はなんだか感動した。カードリッジとは違う何か。初心者なので純正ブラックを使う。紙に載せて乾いた時の色合いが、モンブランのブラックが一番上品と言うか味がある。インクの濃淡とか、薄いところの透け具合とか。金ペン堂のご主人が『モンブランの黒が一番いいから』って言ってた理由もわかるなあと。
149のボディはかなり大きいので、インクも多めに入る。今回はペン先も洗った。せっかくなので薬局で精製水を購入。東京の水道水は綺麗だと言うが、湧き水を普通に飲んでいた田舎っ子にとってはちょっと無理。万年筆の洗浄に味が関係するわけではないが、なんだかなあーと思って。蛇口から出るお湯、白いし。
モンブランの黒は、水で流すと紫に近い。デルタの黒は本当に真っ黒なんだが。精製水を冷蔵庫で保管していた所為か、インクの溶けがあまりよろしくない。今度使うときは常温に戻してからにしようと思った。気の所為かもしれないけど。
私はいまだに手を汚さずにインクの吸引が出来ない。翌日まで残ってるとちょっとダメなような恰好いいような。ソワレもインクを入れたので(こちらはコンバーター)、右手にモンブラン、左手にデルタのインクがまだ残ってる。さすがに結構洗っても落ちないよ?
万年筆の可愛さは、手がかかるところだ。その可愛らしさは猫に通じる。まあ、猫よりは実用的で役に立つけど。猫はあの役に立たなさが可愛いんだからね。そこにいるだけでいい、生まれたままの姿で、そこに存在しているだけでいい、って、オリュウノオバが言ってた絶対的な肯定を、猫は具現化しているのだなあ。猫最高。

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