ここが終点と思っていても、おかしなことに、いつもいつも、終わりが始まりだ
中屋万年筆 シガーモデル(黒溜)ロング

中屋万年筆 シガーモデル(黒溜)ロング

反省はしている。後悔はしていない。
納期は2月下旬から3月上旬だと言うことだったので油断した。うっかり二月上旬に届いちゃったじゃないかね。世界の万年筆祭を外した私の作戦勝ちなのか?
Nakaya Cigar-Model LONG
モンブラン149と長さ比較。ひどく長い。中屋万年筆のサイズ&重量表によると、キャップを閉めた状態でロングは163mmなのに対して149は148mmと2cm近い差がある。おかげさまで、大体のペンケースに入らない。コレクターズボックスにもだ。購入時のおまけとしてちりめんの万年筆入れがついてくるが、これは布製なので鞄に放り込んで持ち歩くと言うわけにはいかない。机でじっくり使うしかない。
しかし、重量は軽いのだった。それはもう悲しくなるほどに。見た目重厚な感じがするが、持ってみるとものすごく軽い。25gだ。149は32gなのに。これは重めの万年筆が好きな私にはマイナスポイントになるかと思いきや、使いやすさの観点から考えれば疲れなくていいんだろうなあ。
でも、それにしても軽い。エボナイトだから? きっと漆塗りの器なんかも持ってみたら軽いんだろうなあ。
Nakaya Cigar-Model LONG
ペン先はデフォルトのまま、金一色。ルテニウム鍍金もちょっと憧れたけど、多分10年経ったら金がいい感じにヴィンテージの雰囲気を醸し出すに違いない。
プラチナのカードリッジ(ブルーブラック)が装着された状態で送られてきたが(販売前にインクを通して最終チェックをするのだという)、早速ぶっこ抜いてドクター・ヤンセンのナポレオンを入れてみた。当然、コンバータも同時にお買い上げ。
書き味は、『優等生!』といった感じ。ニブは太字だが書き癖から来るインクスキップもないし、最初の1文字目から快適に筆記できる。全く問題はないのだが、面白味もない。まあ、M1000やらヴィンテージモンブランのOBBニブとかが好きな私の求める面白味と言うのは、多分必要のないものなのだが。やわらかさが欲しければ注文時に軟ペン加工も選べたわけだし。スタブっぽくしたければミュージックニブにすればよかったわけだし。
今のところ、ペン先は硬く、しなりは全くない。質実剛健、といった雰囲気の男性的な万年筆であると言える。ああ、そうね、侍っぽい雰囲気があるかもね。先日映画で見た片岡知恵蔵みたいな雰囲気、と思ったら妙に納得してしまった。何の装飾もないシンプルな形も、日本刀の刀身に通じるところがあるようなないような……
Nakaya Cigar-Model LONG
ペン芯はなんだか安っぽいような色をしている。材質はなんだろう。もちろんペン先とペン芯の間に隙間などない。ちなみにペン先のスリットも綺麗に開いており、ペン先もつるつるに美しく研磨されている。ルーペで覗いてにやにやしてしまった。職人技って凄い。お見せできないのが残念です。
Nakaya Cigar-Model LONG
ネジのところは金属。安心です。エボナイトが削れてしまう心配をしなくてすみます。
Nakaya Cigar-Model LONG
ペン先は太字だが、極太でもよかったかもしれないと思った。あるいはミュージックでも。太字なのにデルタのドルチェビータMより細い。ただ調整により1段階程度の太さ細さの調節は可能であるようなので、どうしてもダメだったらまたお願いしようかなとひそかに考えている。
書き味は上記のとおり、硬い。ガチニブ、とはこういうことを言うのかもしれない。紙に当てたとき「こつり」と言う感触がある。149の硬さとはまた違う、金属めいた印象と言おうか。だがすべりはよく、私の筆記速度には合っていると思う。あと、全体的になんか果物みたいないいにおいがする。他のエボナイトの万年筆はみんな墨のにおいがしてたからちょっと驚いた。
私はキャップを尻軸につけて使う派なので、右手にキャップを握り締めていると変な感じがする(ロングはキャップを付けずに使う設計だそうです)でも無理矢理キャップして漆がはげたら厭だし、どっちにしろ長すぎて遣いづらくなってしまうので、何とか慣れようと思う。
さわり心地はとてもよい。漆っていったらかぶれるから触るなと幼少のみぎり母親に厳命されて恐ろしい印象しかなかったが、こうしてみると伝統工芸品を見ているようで穏やかな気分に浸れる。<所有している満足感>にどっぷり浸れ、なおかつ実用に耐える書き味を持っている、と言う、至れり尽くせりの万年筆ではあるようだ。
……初めての国産万年筆ではあるけれども、国産はこれでもうおなかいっぱいかも(今の段階で)。性能がいいだけに、1本持ってたら十分のような気がする。でもニブ違いで欲しいかも……物欲恐ろしいですwww
今はまだ、インクは迷っている。とりあえずナポレオンを入れているが、慣れるまでもうちょっとフローのいいものを入れたほうがいいのかも……ウォーターマンBBとかレーシンググリーンとか……色彩雫とか?(先日丸の内オアゾの丸善に行ったら色彩雫全色が万年筆に入って試筆OKだったので、サンプルとして青系緑系全部試して紙を貰って帰ってきたYO!)(そして今日、松露と孔雀を購入してしまったのは秘密です)

4 Comments

  1. takaya

    おめでとうございます。予想外に早い納期でしたね。
    私も気になって先日伊東屋にサンプルを見に行ってしまいました。漆・・・奥深ですね~。我々は欲深です(ゴメンナサイ)。
    黒溜め  風合いというより風格を感じますね。
    ニブは硬めですか。でも書き込んでいくうちに少しは馴染んでくるでしょう。字幅も若干太くなるでしょうし・・・。
    色彩雫2色までお買い上げで・・・当分楽しめますね。って次の逸本を考えてはダメですよ。へへっへ!
    重ねてお祝い申し上げます。

  2. たがみ たけし

    黒溜おめでとうございます!めちゃめちゃ早かったすね!でもやはり黒溜は美しいですね~ほれぼれします!
    確かに使い始めは硬く思うものですが徐々に馴染んで来ると思いますよ~
    そうするとかなり使い回しの良い1本になるのではないかと思います!こういったスタンダードなモノもあって良いのでは?
    しかも中屋万年筆は1本では終わらないと思いますよ(笑)!国産万年筆とは別腹でいくのでは……

  3. しげ

    黒溜のご到着を心よりお喜び申し上げます。
    早かったですね。長めのお体のわりにスマートな胴芯。いいですね。
    日本の技の為せる業でしょうか。
    生意気ですが、私はインクは「月夜」をお薦めします。ブルブラ系ですがさらに落ち着いた色合い。私はドルチェのミディアムに入れていますが、紙に染み渡り乾いた後の大人な発色。是非お試しください。
    私も病が出てきそうで弱っています。ドルチェのオーバーサイズと色彩雫「冬将軍」が・・・。

  4. 深崎

    >takayaさん
    お祝いありがとうございます。欲望は果てしないですね。次は何のインクを入れるかで偏頭痛が出るほど悩んでいますよ!
    最初は「……軽いなあ……」と思ってたんですが、3日ほど経ってみると「あれ、結構渋くね?」と思い始めるあたり、漆は本当に奥が深いです。踊らされています。死の舞踏ですよ、まさに(財布の中身的な意味で)
    >たがみさん
    ありがとうございます。びっくりするほど早かったです。
    徐々になじみますか。そのお言葉を胸に、1年使い尽くしてみたいと思います。やわらかくなーれ。最初からインクが出るので馴染んでると錯覚しがちですが、まだ3日目ですもんね……これからの変化を楽しみにしたいと思います。
    >しげさん
    ありがとうございます。主人はこの万年筆のことを胴田抜と呼んでいましたよ。子連れ狼的な意味で。
    実は今、彼には月夜が入っているんです。でもまだ迷ってるんですよねえ……なんかこうもう少しぴったり来る色があるような気がして。このままではモンブランの黒を入れてしまいそうです。赤みもありますしね、あの黒は。
    うーん、悩ましいです。月夜もいい色なんですが……
    冬将軍、いい色だと思います。使いたいんですが、万年筆があいてなくて(ゴクリ)太字に入れて楽しみたい色でした。ぜひ病に身を任せてみてはいかがでしょうか。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です