中屋万年筆をめぐる冒険

(長いです)
なにやら、『漆』と言うのは英語で『Japan』とも言うそうで。趣味の文具箱で見た中屋万年筆輪島漆塗に一目惚れして幾星霜、とうとう覚悟を決めました。キヨミズのステージからダイビング。
輪島漆塗・黒溜・シガーモデルロングサイズ、と心に決めてはいたものの、とにかく実物を触ってみないことには心もとない。調べたところ新宿伊勢丹のメンズ館が中屋万年筆の取り扱いを始めたとのことなので、旦那におねだりして連れて行ってもらった。東京で暮らし始めて早数年、いまだに新宿駅がわからない。
メンズ館は落ち着いた雰囲気だった。8階の文房具売り場は想像していたよりは小ぢんまりとしていた。抑え気味の照明で美しくディスプレイされているが、本数もあまりない。中屋に至っては4本しかなかった。黒溜ライターのロングと、緑のセルロイドとあと何か。興味なかったので覚えていない。
舶来Mくらいの字幅のものが欲しかったのだが、考えてみれば国産ペン先は初めてなので太字と中字(中軟)を試させてくれとお願いしたら、中軟はセルロイドだけ、太字は置いていないとの回答。黒溜ライターは極細だった。じゃあどうせプラチナと同じ(ような)ペン先だろうからプラチナの太字はありますか? と問うとプラチナ自体の扱いがないという。困っていると、「伊勢丹本館の文房具売り場はプラチナの取り扱いがございますのでよろしければそちらの方に」
ああそうですか、とそそくさとその場を去る。なーんか期待して多分がっかりした。万年筆よりも高めのノートとか、そっちの方が充実してた気がする。実用と言うよりは、万年筆=大人の男のステータス、みたいな雰囲気。大きな机と試書き用のペンと紙が用意されていたが、誰もいない。なんか雰囲気だけ高級文房具店だけど中身が追いついてないみたいな。これからの充実を期待するが多分二度と行く機会はないだろう。根本的に求めているものが違いすぎる。
しかしここでライターモデルとはいえロングサイズの黒溜に触れたのは幸運だった。149よりも2cm長いこのモデル、私の手には長すぎるだろうかと思っていたがそんな事もない。キャップをつけずに使うので、筆記時にそれほど長くなるわけでもない。長さはほとんどキャップ。そして、エボナイトはものすごく軽い。もっとずっしりしていると思っていたが、呆気に取られるほど軽い。むしろもっと重くてもいいと思った。
黒溜は地味だが美しい……暖色系の抑え気味の照明によく映えていた。自宅の蛍光灯で見たらどうだか解らん。さわり心地はとてもよかった。ひんやりして吸いついてくる感じ。
そしてその足で今度は本館へ。こちらは文房具売り場の一角に万年筆が並んでいる感じ。長刀研ぎの万年筆が特別展示されてた。あと、狭いブースなのに妙に店員が多い。
「プラチナの太字を見せてください」と言うとすぐに出てきた。字幅がみたいだけ、と言うことを先に告げて試し書きさせてもらう。中字は私には細すぎ、太字はちょっと太いかなあ、と思ったけどこちらに決めた。軟ペン加工をしてもらおうかと悩んでいたのだが、書き心地はいいしこのままでもいいかなと考え直した。太すぎたら調整してもらえばいいし、くらいの軽い気持ちで。細すぎるよりは太い方が調整もしやすかろうと。
買う気もないのに試書きさせてもらってごめんね、と言う謝罪の言葉を心の中で呟きつつ、万年筆売り場を後にする。店員の対応は本館の方が落ち着いていて気持ちよかった。
しかし、今回(ほとんど)初めて国産ペン先に触れたが、さすがに国産は書きやすいです。8,000円くらいのペンらしい。モデルとかはよくわからないけど、1万円以下であの書き味だったら素晴らしいよなあ。ただデザインがなあ……舶来万年筆の値段のほとんどはデザインに対して払っていたんだなあ、と再確認した。でもデルタが好き。
そのあと、ついでに同じ新宿にあるヴィンテージ万年筆で有名なKINGDOM NOTEにも連れてってもらった。マップカメラの入ったビルのエレベーターを昇ると、目の前にデルタのマリーナ・グランテが! これは私に対する挑戦ですか?! って、テンションがあがる。
店内は落ち着いた雰囲気で、壁一面に現行品とヴィンテージ万年筆が並んでいる。眼福眼福。いい目の保養になります。モンブランとかペリカンとかを筆頭に、結構な種類がありました。店の奥には、モンブランの作家シリーズ・クリスティとかも鎮座していた。インペリアル・ドラゴンもあった。にやにやしながら眺めるわたくし。
ヴィスコンティのミッドナイトボイジャー欲しいなあ……でもFだしなあ……とか思っていると旦那に連れ出された。絶妙のタイミングだった。あれ以上あそこに留まっていたら危険だった。ありがとう旦那。でも家に帰って中屋で注文するけどね。
KINGDOM NOTEさんは以前通販でボールペンを買ったことがあって、その時の対応が早くて丁寧だったので信用できるなあと思っていたのだが、店舗もやはり同じ印象を受けた。今まで対面じゃないと怖かったのだが、ここからだったら通販で万年筆買ってもいいかもしれない。ミッドナイトボイジャー……
そして帰宅し、ブラウザを立ち上げ、中屋万年筆にアクセス、あとはもう欲望に身を任せつつカルテに記入。ペン先は迷いに迷って染め分けはしないことにした。ルテニウム鍍金すごく格好良かったけど……。廻り止めもスターリングシルバーの猫があってものすごく迷ったけれどもなんか顔が怖いしシガーモデルの良さは装飾をすべて削り取った潔さにあるだろうと思い、泣く泣く却下した。
M1000を手に入れて一通り万年筆欲が収まったと思ったとたんにこれだよ。欲望は限りない。業の深い話です。反省はしているが後悔は(ry
これからほぼ二月、一日千秋の思い出夜を過ごすことになりそうです。

中屋万年筆をめぐる冒険」への9件のフィードバック

  1. 初めまして。たがみと申します。いつもこちらのブログを楽しく拝見させてもらってます。「中屋万年筆をめぐる冒険」とのタイトルに釣られて,初コメントしたいと思います!
    自分も中屋万年筆は何本か所有しておりますが、一番のお気に入りは「シガーロング 桔梗 中軟 象嵌入り ルテニウム鋳金」です!ルテニウムはシブーイ銀色って感じですから、ロジウム鋳金の様にピカピカしてないし落ち着いてますよ!
    あと中軟は国産の現行で比較するなら、パイロットのSMとかになるのかな~感覚は人それぞれ違いますが、今深崎さんがお持ちの50年代の142よりも縦に撓る感じが強い様に思います。(先日アップされていた142の記事ありましたよね!あれ読んで自分も同じくペンクラスターさんで142購入してしまいました!)軟ペン加工は良いと思いますが、特軟加工はどうかと思われます!
    まずはご挨拶をかねて!

  2. 松があけたら・・・早々に、否イキナリのネクストステージにお進みあそばれましたな。
    他人事であって他人事ではない。私めも完成・納品を一日千秋の思いでお待ち申し上げます。
    しかし、深崎さんのドメスティックペンデビューが中屋万年筆とはBlastedに何とも相応しいですね。インプレが今から超楽しみ~!   ではまた。

  3. >たがみさん
    初めまして、コメントありがとうございます。
    中屋を何本も、というのはすごいですね。塗りの色は最後まで迷いましたが、桔梗も綺麗だった……
    お話を伺うと、特軟加工してもらわなくて正解だったかも。プラチナ太字はそのままで書きやすかったです。実際に使っている方の印象をお聞きするのが一番参考になります、ありがとうございます。
    >ルテニウムはシブーイ銀色って感じ
    また私を惑わすようなことを……! 今からでも遅くはないかな……? いやしかし、経年変化した時の金は美しいしね……? まだちょっと迷ってます。
    そして142ご購入おめでとうございます。私はあれで金の経年変化の美しさを知りました。ペンクラスターさんは落ち着いた雰囲気でいいですね。先日年賀状もいただきました。カモネギですか、私。
    それでは、これからもどうぞよろしくお願いします。
    >takayaさん
    是非散財してください。3月上旬くらいになりそうです。その頃にはほら、聞こうと一緒で財布の紐も緩くなってるでしょうし、何より世界の万年筆祭りがありますからね!(中屋のブース、今年もあるみたいですし)
    ドメスティックペンデビュー、するつもりはさらさらなかったんですが、一体どうしてしまったんでしょうね私の金銭感覚。誰か助けてください。いやまじで。

  4. こんばんわ。たがみです!ルテニウムメッキで迷わせてしまったようですね(笑)もう金一色で注文されたんですよね?金一色ニブは潔い感じで自分でも何本か所有しております。(パイロットの67辺りですが)
    実は万年筆関係のブログを今年の1/5より始めました。まだまだ皆様にお見せ出来るレベルではないのですが、ちょっとづづ頑張ってみたいと思っております。
    その記事の中でルテニウムメッキのペン先を写した中屋万年筆の記事を挙げたいと思っております。今度2本目の中屋万年筆を購入される際の参考にでもなればと思っております(笑)予定は1/23の深夜の予定です!良かったらお立ち寄り下さいませ!
    http://mizuuminohotoli.blogspot.com/
    まずはご報告まで!

  5. >たがみさん
    ルテニウムの写真、楽しみにしています。2本目の予定はありません。ありませんよ?!(多分)

  6. しばらくコメントできずすいません。バタバタしておりました。
    中屋、おめでとうございます。私も日本食を彷彿させるシガーモデルに興味津々でした。到着が我が事のように楽しみですね。
    私も、ひょんなことからMB145を手にしています。友人が万年筆を購入希望とのこと。一緒に丸善へ。彼はパイロットカスタム74を。同時に目に入った845を試筆。我が物にしております。144の後継とはいえ、146よりもさらにスリムな握りごこちに、思わず感動です。現在MBのRBを入れて、ナポリとともに出勤中です。
    万年筆を主要筆記として2年弱、皆さんと出会って1年弱、なんか、いーぐわでいろんなことが進んでいるのも、万年筆のおかげでかと。
    ゆっくりとした時間が大事なんだなーと思うこと仕切りです。

  7. >しげさん
    ご無沙汰しております。今は首を長くして到着を待ち望んでいるところです。
    145ってまだ触ったことがないんですが、146とはそんなに違いますか? ちょっと興味が……いやいや……もうモンブランの現行品は買わないって誓ったんですが……
    その後ナポリの調子はいかがですか? うちの白はペン先に近い方のボディから内臓が透けて見えるのですが、何だかそれすらもかわいい感じです。ただ、Bニブは本当に使いどころが難しい……にゅるにゅるなんですけどね。正直、Mニブの赤とか欲しいです。渋い黒を入れたい。

  8. MB145シルバーは146より一回り小さく、メモ用にも最高です。私のは少しフォローが良すぎてMなのにB弱のような感じ。142よりは大きいのかな。MBは同じ形なのにあの黒さとてっぺんの雪冠が安心感を与えてくれますね。
    ナポリ白も良い感じです。こちらはMなのに繊細な細さです。最近はメモに大活躍です。
    最近黒に興味が出ています。パイロット845など国産のフラッグシップ、深崎さんもお持ちのソワレ、142などなど。142はいかがですが?

  9. >しげさん
    142は小さいです。私も手が大きい方なので、長いこと使っているとちょっと手首が疲れます。大量筆記にはむかないかも。書き味は気持ちいいんですが……
    ソワレはいいですよ。ドルチェと全く同じ形状なんですが、ボディが黒い分引き締まって多少スレンダーに見えます。オレンジのラインが色っぽいです。黒がソワレなら、オレンジのドルチェはマチネーだと思うんです。関係ないですかそうですか。
    モンブランは、ふっと手もとに目を落とした時にあのホワイトスターが見えると『可愛いなあ……』と和みますね。いつかはビンテージの146か145を手にしてみたいものです。

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