暇なので調べてみた。インターネットって便利だなあ。
三島由紀夫
モンブラン149
パーカー(型番不明)
三島由紀夫文学館サイトで、原稿と万年筆の載った机がある、三島の書斎の写真が見れる。通販ではがきサイズの原稿写真も買える。正直、ちょっと欲しい(ポストカードを集める趣味もある)
東京近郊では、神保町小宮山書店の4F特設コーナーで、三島由紀夫の絵とか複製原稿とかが売られている。正直直筆原稿は喉から手が出るほど欲しいような気もしたが、とんでもない金額だったので途中から目が0を数えることを拒否した。細字の万年筆で奔放に書き殴られた文字は美しい。
原稿用紙には太字がかっこいい、と思っていた私の先入観を粉々にぶち壊された。細字かっこいい。
愛用の原稿用紙は満寿屋だと聞いていたが、ガラスケースの中に入った原稿(複製)からは確認できなかった。
中上健次
プラチナ万年筆(ポケット)
青インク(メーカー不明)
生原稿発見のニュース。見に行きたい。そして複製を部屋に飾って拝みたい。
『定本 作家の仕事場―昭和から平成へ読み継がれる日本の作家一三五人の肖像』には、万年筆を持った中上健次の写真が収録されている。万年筆ちっちゃ! 一晩に40枚の短編を書き上げたというのはこのペンだろうか。
改行も何もなしで集計用紙にびっしり書き綴ることで有名な中上健次。改行位置と誤字脱字の修正は編集者に一任していたとか。丸っこい独特の文字で読む作品はまた別の顔が見えて面白いと思う。
宮沢賢治
使ってたかどうかは知らないけれども、このサイトに面白い記事があった。
賢治が地元岩手県でイリドスミン(主成分はイリジウム)が採掘できることを間接的に発見。
ちなみに、複製原稿はここで買えるらしい。ちょっと欲しい。
あと、賢治は印刷所に頼んでオリジナル原稿用紙を造って使用していたようだ。賢治が使った用紙などについては、ここのサイトが(異様に)詳しかった。
丸善の600字詰め原稿用紙(丸善特製 二)を使っていたという話もあるので(丸善サイト参照)、とりあえず買ってみた。薄くて白い紙に黄色っぽいレトロな感じの罫線が入っている。結構良かった。
谷崎潤一郎
初期はペンで書いていたけれども、毛筆が一番いいとの結論に達したようだ。なんとなく納得した。あの流れるような文体には毛筆があっているような気がする。
太宰治
エヴァーシャープ(型番不明)
青森近代文学館サイトから転載。
エヴァーシャープの万年筆はもともと美知子夫人がアメリカ土産にもらった品であったが、いつからか太宰が使うようになった。透明な軸は途中で破損して取り替えいちいちインクをつけて書いていたが、軽く字を書く癖があった太宰は、1939(昭和14)年頃から最期まで、この万年筆1本で執筆を続けることができたという。文具に凝ることもなく、身辺に必需品だけを置いて簡素に暮らすことを好んだ太宰の数少ない愛用の品の一つである。
ああ、万年筆を収集するようになってしまった心が痛いよ! 名文と万年筆の値段に比例関係はないのだった(わかっていたことではあるが)
内田百閒
オノト万年筆
言わずと知れた漱石の弟子、遺品としてオノトを貰い受け、それを大事に使っている。
『東京日記』かなんかに、妻に水を入れた盥を部屋まで運んでもらってインクを洗うシーンがある(『百鬼園日記帖』だったかもしれない)
インクはやっぱりセピアだったのかなあ。
安部公房
かなり早い段階でワープロを導入した作家として有名な安部公房であるが、ここのサイトに以下のような報告があった。
安部公房が使用していた万年筆の中で愛用の品は、
プラチナ3776ギャザード
パーカー75スターリングシルバー
モンブラン146
ペリカンM400緑縞
です。
『安部公房 (新潮日本文学アルバム)』に写真が載っているそうなのだが、未確認。
ちなみに、『飛ぶ男』という小説が、死後愛用のワープロ(文豪)に入っていたフロッピー・ディスクから発見され、出版されている(現在は多分絶版だろうけど……)
安部公房はなんとなくキーボードをガチガチ打ってるのが似合いそうな気がする(特に後期の作品は)
古井由吉
不明。
確か、下書きは鉛筆で、清書は原稿用紙にペンを使用、だった気がする(なんかの雑誌の対談で読んだ)うろ覚え。
大江健三郎
どうもペリカンくさい(目撃談による)
モンブラン149という目撃談もある。
サイン会に行かれた方の話によると、なんかペリカン(?)のM~Bくらいで、インクはペリBBっぽいけど、どうだろう。つーかこのサイン会、行きたかったよ。『水死』は発売と同時に買ったのに!
ポール・オースター
第1稿は万年筆、その後タイプライターで清書(万年筆の種類は不明)
こちらのインタビューにはこうある。
確かに、手間のかかるやりくちではある。特に最後のタイプの部分はしんどい。最新作の Mr. Vertigo を書き上げた時なんか、こう、修正に修正を重ねた手書き原稿の束を前にして、これからこいつを全部タイプしなきゃならんのかと思うと心底ゾッとしたよ。『よし、これが最後だ、二度とこんな間抜けな書き方はするまい』と決心したんだが、しかしタイプに向かって、読む速度で原稿を打ってると、手書きの時には気づかなかった、読んだ時の文章のリズム感が見えてくるんだな。それでまた、あちこちもたつくところやまわりくどいところをたくさん直せた。だから、あれはやっぱりわたしにとって必要なプロセスだし、次の作品もああやって書くだろう
海外だと割りと早くからタイプライターが普及してただろうから、万年筆を使ってる人はあんまりいないのかしら。とにかく情報が少なかった。セリーヌとかは絶対万年筆派だと思うんだけど(特に亡命中や投獄中は)
まあ、話題にはならなくとも一昔前の作家なんかはみんな使ってただろうし、その中ではやっぱりペリカンとモンブランが強かったんじゃないかなあ。
調査不能だったのは、川端康成。氏のコレクションをまとめた冊子で、愛用の万年筆とかなんとか小さい写真があって、キャップがスターリングシルバーのモンブランがあったのだが、尻軸側から撮っているのでキャップトップが見えない。へんに平べったいフォルムをしているのはかろうじて分かるのだが。尻軸のリングは丸い。マイスターシュティック644か……? これのシルバーに見えるんだがなあ。筆跡はかなりスタブ調の、多分Mくらいだと思う。
あと、勝手なイメージだけど、フォークナーはタイプライター使ってそう。ドスト先生は羽ペン。バロウズ先生はそこらへんにある適当な鉛筆かなんかで下書きをして、タイプする感じ。ヒューバート・セルビー・Jrはタイプライター、多分。それも中古で買った古っい奴。あくまで妄想ですが。考えてみれば、アルファベットってシンプルでいいよな……
何事もかたちから入る人間なので、「好きな作家が万年筆使ってる」→「かっこいい」→「万年筆欲しい」という三段論法を補強するために調べてみた。じゃあDELTAに執着するのやめろよ……と思うけど、あの軸には魔力がある。
三島由紀夫の原稿の文字、わたしも格好いいなと思います。
安部公房、手もとに『新潮日本文学アルバム』があったので見てみました。ペン皿の写真(ワープロを使い始めて以降の撮影と思われる)があって、こちらで紹介されていた万年筆を確認できました。
他には昭和37年頃の執筆風景の写真が載っています。机は使わず画板の上に原稿用紙を置いて万年筆(パーカー?)で書いています。
大江健三郎については、ニュースステーション(ずいぶんと昔の話ですが…)に出演したとき、モンブランの万年筆(146?)を手にしていたという記憶があります。
太宰といえばいつもこの手帳を思いだす。
手帳として使い方おかしくね? と思いつつ迫力に圧倒される。
http://www.plib.net.pref.aomori.jp/top/museum/meihin_13.html
いきなりタイプという作家はいないでしょうと書きかけて、ふとWikipediaでタイプライターを引いたら結構いるんですね、いきなりタイプの作家。ヘミングウェイの立ったままタイプってのも何となく解るだけに微笑ましいですが、ジャック・ケルアックの紙切れで中断されるのが嫌だからロール紙で36メートル打ちきったってのもすごいですね。
古いタイプは疲れてくるとアームはからむはキーは重いは、あっ間違えたなんてのも面倒だし大変ですよ。手書き原稿に良くある数行書いてから戻って十何文字も縦線で消して書き直す何てのもできませんしね。
深崎様のお持ちの万年筆は全て普通に軽いか柔らかいかだと思いますが、安部公房の75スターリングを是非一度お使い下さい。特にM以上の丸々と肥えたポイントがついてる奴。
しっとりとした重さに加え、ガチニブのクセにヌルヌルと柔らかいクレヨン塗りつける様な独特の書き味は、ペン先との対話に疲れた時ぞんざいに書き殴るのにぴったりかと。特に古典BBでぬるっとしたインクだとにゅるにゅるにゅるーって感じで書けます。無論XFの神経質且つかっちりとした書き味も棄てがたいです。
ところで深崎様なんか電波送りませんでした?デルタ2本も買っちゃったんですけど?
物欲とかそんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ。もっと恐ろしいものの片鱗を今味わってるぜ。チタンペン先最高
私も先日、建築家の安藤忠雄さんがファーバーカステルのシャープペン
を使っているのをテレビで見て、その3分後にはネットで同じ物をポチってしまいました。シャープペンだから良かったものの、限定物の万年筆だったりしたら大変な事になっている所でした。
このブログからは物欲の電波が出ているぜ
ブログ主は物欲の魔女に違いない
オレの手元にもいつのまにか赤い万年筆
こ、これはッ、デルタのトスカーナ!
ついに我が手に来たか
この赤、美しい! 美しすぎて目が離せない
(クレジットカード利用控からは目を背けつつ)
>花谷さん
ご確認ありがとうございます。パーカーか……その本買ってみようかな。
大江健三郎はなんとなくモンブラン好きそうですね、というか似合いそうですね。勝手な思い込みですけど、「似合う(様な気がする)万年筆」ってありますね。私には一体何が似合うというのか……
>ギャラードさん
罫線か無地の手帳使えばいいのに! と思いますけど、ああいうのもパンクでいいですよね。罫線など省みぬ! というかどうでもいい! みたいな……
あと電波は出してません。トスカーナが手元にある、それが運命だったのです。いいなあ、赤が一番綺麗だと思います。赤といえば、今、モンブランのコーラルレッドの万年筆が欲しいです。ええ、電波なんて出してませんから安心してクレジットカードを使うといいよ!
>ardbeg32さん
タイプライターは書き直しが出来ないところがかっこいいと思います。あの音も素敵。一筆入魂、見たいな気合があるような……
あと電波は出してません。デルタが手元にある、それが運命だったのです。何をお買い上げになったのですか? 私は、もうDELTAはマリーナ・グランテで打ち止めにしようと思っているのに(思ってるだけ)
あと私を新たな泥沼に引きずり込むのはやめてください!(コーラルレッドが欲しいんです!)
>nakayaさん
好きな著名人が持ってるのを見ると欲しくなる、のは定説ですね。これは危険です。なるべくテレビを見ないようにすればいいのか。三島由紀夫が今も生きててすげー高い限定万年筆使ってるところを見たらぐらっと来てしまうかもしれません。おそろしや。
買ったのはドルチェのミディアムとコレです。
http://item.rakuten.co.jp/hunnyhunt/delta-titanio/
もうふわっふわで、すかかかかーっと書き殴れるのですが、どうもペン芯がインク馴染みが悪いみたいできちんと供給してくれません。界面活性剤で処理しても効いてるウチはドボドボイスキーなのに切れると間欠的にしかインクを送りません。今ペン先をインク壺に漬けるという民間療法を試しています。
タイプライター、音と言えばこういうのがありましたね
http://www.youtube.com/watch?v=g2LJ1i7222c&feature=player_embedded
物欲の電波キタコレ
深崎さん(とワタシ)を新たな泥沼に引きずり込むのはもうやめて!
>ardbeg32さん
チタンペン先、渋いなあ……かっこいいです(><)いや、買いませんけどね。変態ペン先はパラジウムだけで充分ですよ……!
ミディアム、どっちでした? もうペン先、14Kになっちゃってるんですかね。18Kのうちにもう一本……とかおもってないですよ、まじで。
>ギャラードさん
物欲には屈せぬ! という強い意志を貫いてください。モンブラン作家シリーズの、マーク・トゥエインかっこいいです(><)
ドルチェは18金でした。(ラッキー)
チターニオはミディアムより僅かに長い位でまるで兄弟ペンのよう。
並べて眺めてにやついてます。
ペン先の不調は丸研ぎに加えて鍍金か何かのコーティングがツルツルしすぎてたせいの様で、1000番の紙ヤスリとラッピングで一撫でしてやったら絶好調と変化しました。もともとドボドボイスキーですし。
普通柔らかいペン先は訓練が必要と言われるように無闇に筆圧をかけられませんが、このチターニオは紙に押しつけるとうねうねとたわむクセに書いてる最中は出来の良いサスペンションのように手の動きに追随する上神経質な弱さが一切無く、そのくせ腰の強さも感じさせないという、紹介したページの売り文句のように他に比較しようのない素晴らしい書き心地です。
今日用事があってA4を6ページ程一気で原稿を書きましたがπの15号ニブのような充実感もなく、10号SFニブのような疲労感もなく、ただ淡々と、しかしもう書くことはないのかもっと書かせろ気持ちいいぞこの野郎と至福の時を過ごしました。
華やかさは一切無いペンですが、大量の物書きには向いていると思います。しかしこの兄弟太いよママンorz
>ardbeg32さん
18金おめでとうございます。
しかし、チターニオもパラジウムも、変態ペン先はやってるんですかね? まあ、ボディはもう打ち止めっぽいし、そういう付加価値つけないと新しい市場は開拓できないのかな……あのペン先、中屋のルテニウムめっきみたいでかっこいいですね。
つーか気になりますね、チタン……最近は一周回ってまた柔らかいペン先大好き! みたいになってます。多分レインフォレストの所為。
なんだかんだで、太いボディは疲れにくくていいと思うのですが。
『しかし、私が買物をするのは、夜になると街角で、台の上に品物を山盛りにしている店である。買うものは一瓶百円のインクである。以前はパーカーのインクだったが、いまはシェーファーの万年筆を使っているので、シェーファーのものを買う。(中略)露店では、二瓶インクを買うので、一年はそれで間に合うから、顔馴染の店はないし、買う店をきめているわけでもない。』
吉行淳之介「鬱の一年」-銀座の露店-(1978角川)より
文具店でなく、露店でインクを買う。吉行らしいこだわりを素敵に感じてしまいました。一年で二瓶のインク使用は、多いのかすくないのか。
「鬱の一年」はwikiでは、小説に分類されていますが、エッセイが正しいとおもいます。
>miaztoさん
当時の銀座の露天って、風流だったんでしょうねえ。
吉行淳之介は「悪い夏」とかタイトル忘れたけどマネキンを燃やす奴が印象深いです。そのあと、藤田和日郎が「からくりサーカス」でそんなシーンを書いていて、ああこの人も小説沢山読んでるんだなあと妙に感心したりとか。
エッセイは読んだことないので、そのうち挑戦してみたいと思います。