ここが終点と思っていても、おかしなことに、いつもいつも、終わりが始まりだ
万年筆四方山話

万年筆四方山話

今年になって、まるで何かに取り憑かれたように万年筆を買っていたが、なんかすっきりしない。物欲が満たされない。
今年買い集めた万年筆たち、どれも気に入って入るのだが、今自分の手に一番なじんでいると思われる万年筆、ドルチェビータのミディアムに勝る書き味の万年筆がひとつもない。何かどこかに不満が残る。万年筆自体の性能はいいのに、最後の最後のところで満足できていない。これはもう病気です。
今の段階で、最強の万年筆はドルチェビータ(ミディアム)とM800と149だと気づいた。もう少し範囲を広げるなら、M1000と146を入れてもいい。なぜ万年筆を買い続けているかというと、『もっと凄い書き味のがあるかもしれない』という尽きせぬ泉のような欲望に突き動かされているからに他ならないが、今年に入っては敗北続きで、もしかしたらもうこれ以上は望めないんじゃないかと諦めかけている。
それは世界にはいろいろな万年筆があるし、値段だって1500万円以上するのだってあるわけだから、私が持っている万年筆だけで比較したところで話にならないのだが、でもこれで満足しちゃってるんだもん。これ以上、自分の好みが変わらない限り、万年筆を増やす必要はないんじゃないの? だって自分にとって最良の万年筆に出会えちゃったんだもん。
……と、自分を説得しようとしている煩悶の日々。これは最初で最後のチャンスなんじゃないだろうか。果てしなく思えた万年筆の深い森から、脱出する道が見え始めてるんじゃないのかな。
これ以上集めるとしたらもう、書き味とかじゃなくて完全に『見た目が綺麗』とかそういう理由になるんだろう(マリーナ・グランテはそれだけの理由でかなり欲しい)
しかしそれでも毎年新モデルが出やがるし、限定品とか、私の物欲をくすぐり続ける鬼畜メーカーがあることは確かなんだが、なんとなくだが、自分の方向性だけは定まったような気がした。これからは無駄遣いをやめよう、欲しいからといって何でも買いあさるのはやめます。だって気づいたんだもん、貯金の残高は有限だってことに。あと149のBニブとM1000のBとかM800のBとか、そんな感じでゆるゆると生きていけばいいんじゃないだろうか!(ちなみにDELTAのBニブは丸研ぎだからあんまり面白くない。Mで充分だと思う。イタリックニブは試したことないけど)
これは、自分にとって再考の万年筆を見つけたという希望なのか、それとももうこれを超える万年筆を見つけることができないという絶望なのか?
とにかく、手当たり次第に食い散らかしたひとつの時代は終わりそうです。終わりそう、ってのが怖いけど。秋の新作も怖い。ユーロボックスとペンクラスターが怖い……
とりあえず、決意をこめて今の気持ちを文章に残すことにした。舌の根も乾かぬうちに新しい万年筆の写真がアップされていたら、読者諸氏は生ぬるくほくそ笑んだらいいと思うよ! 石を投げないでください!
あと、最近は9月始まりの手帳の話題が文房具界隈で盛り上がっているようだが、手帳を全く使わない私は乗り切れなくて寂しいです。手帳は欲しくて、毎年買っては観るんだけど1ヵ月後くらいにはどこに言ったかもわからなくなってるような状態。だって毎日手帳に書き込むスケジュールなんかないし、日記帳は別にある。大体、みんな手帳に何かいてるの? 仕事のスケジュールとか? 内勤プログラマにそんなものないんですけど……遊びに行く友人もいないし……毎日家と会社の往復だし……考えてみれば、私には『予定』と呼べるものが何もない……!
あんまり気づきたくない現実を直視してしまった。今は反省している。

11 Comments

  1. たがみ たけし

    そういった時期をみんな通過していくんだと思いますね~かくいう自分もやたら万年筆に出費した時があった!(今もそんなに変わらないのだが(笑)!)「物欲が満たされない……」と仰るのは自覚されている通り、方向性が定まっていないからだと思うよ~~(「見た目が綺麗」だって充分方向性だと思いますが……)自分の場合は今「書き味重視」で選択してますがついついあらぬ方向にも目が行ってしまって困りものです!しかしそれもまた良し!って感じです!

  2. ardbeg32

    とりあえず私はアウロラの出物がみつかるまで様子見って感じですかねぇ。インクも深崎様のように沢山買って管理しきれる自信がありませんし。
    あ、それでもペンマンブラックは注文しちゃったりしたんですがw
    ヴィスコンティのオマケについてきた黒は気に入ったのですがヒゲが出るのは閉口ものなのでああいう赤寄りでも青よりでもない真っ黒な黒が見つかるまでまだ物欲の火種は残ってるかもです。
    (極黒も持ってますがあれは濃淡が出ない)

  3. ardbeg32

    ところで話は変わるのですが、深崎様がインク工房で作ってもらった『響きと怒り』は私でも購入可能でしょうかね?
    深崎様にレーシンググリーンをお勧め頂いてからあれこれと調べた所、このブログに載ってたドクター・ヤンセン/ゲーテの色がすごく気に入ったんです。
    しかし僅か30mlで2000円(プラス送料)とは暴利なり!と意気消沈した所、同じ記事内のオリジナルインクの記事に気がつきこれは!!と思った次第です。
    セーラーのオリジナルインクなら50mlで2100円ですからね。
    10月のセーラーのペンクリニックに行く予定をしていますので、もし他の人が作った色でも発注可能ならやってみたいのですが・・・

  4. ギャラード

    あれ、今朝見たときはデザイン変わっててリニューアルしたのかと思ったら
    元に戻ってる。見間違いかな。
    ウチも書き味だけならM805で満足してるなぁ
    これまでも時計・ジーンズ・復刻ハワイアンシャツ等々ハマッては卒業してきた
    けどFPも卒業するとき来るのかな
    M1000・M800・M600・M400・M300のF/M/Bが揃ったら卒業してもいい
    そんなに買えないけど

  5. 深崎

    >たがみさん
    そろそろ自分の中に本能的にあった方向性に気付くことができたんですかね―……このまま細く長く行けたらいいです。お給金が変わらない限り。
    書き味は満足してるからもうこれでいいや。知らない方がしあわせなこともありますよね!
    >ardbeg32さん
    ゲーテは、よっぽど梅雨抱くペンで書かないと薄くなりますよ。儚げな暗い緑です。まあそれも好きですけど。あとオリジナルインクは濃淡のでない黒です。せっかくなのでインク工房を待ってオリジナルインクを作成してみてはいかがでしょうか。楽しかったですよ。
    >ギャラードさん
    見間違いではありません……デザイン変えたかったんだけどいいアイデアが思いつきませんでした。
    スーベレーンがそれだけ揃ったら壮観でしょうねえ……どうせなら各色取りそろえてみませんか。M8003色×ニブコンプリート……すごい……!

  6. ウサっこ三昧

    うーん、東方も最近ちょっとさめ気味です。
    私は毎日万年筆を10本近く持ち歩いてるけど、結局ヘビーユースなのは悶とアウロラだけだってことに気が付いてしまって。
    ただ、ちょっと入院中のゴッホとプロフィリだけは、長いことお付き合いしてきたので手放せませんが。
    なんかね、あんまり使わない子がかわいそうになるんですよ。
    セーラーも大事にしてるし、スティピュらもかわいい。
    でも、やっぱり万年筆は道具だから、使ってナンボなんですよねぇ。
    私は昔、かなりの数のペンを処分したことがあって(おそらく世界中探してももう2度と手に入らないであろう、ヴィスコンティのドゥカーレ宮殿のペンセットも手放した)後悔はしてないけど、なんだかその子たちを思うと寂しい気持ちになります。
    今持っている子たちはもう手放したくない。だからむやみやたらに手を出すのはやっぱり駄目だよなぁと最近思った次第です。
    どの子にも大切に愛情を注いであげたいですよね。

  7. 深崎

    >ウサっこ三昧さん
    死蔵してる子がかわいそうになる……解ります。使ってあげたいのにこれ以上は無理、って言うラインがあって、なんか申し訳なくなるんですよね。私は本を古本屋に売ることすらできない人間なので、万年筆を手放すとかは考えられないです。それこそ身を切るような決断……!
    注ぎたいですね―、愛情……

  8. 海上

    フルハルターに行かないのには何か理由があるのですか?
    こと書き味に限れば、調整によりけり、なんですよね? 違うのか?
    あとはいっそのことポメラにするとかさ。

  9. はじめまして。
    万年筆、一人が持って回せる本数は有限ですよね…
    機械式の腕時計が好きな人も似たようなことを言ってましたが。
    手帳は通し番号入りノートとして使う方もいらっしゃるので、
    こちらにいらっしゃいまし~。
    ポメラはポメラで便利ですが。

  10. 深崎

    >海上さん
    はじめまして、コメントありがとうございます。
    フルハルターさんは行きたいんですが、タイミングが合わなかっただけです……149を買おうと思った時にモンブランの取り扱いが中止になったり、M1000を買おうとした時にM1000の取り扱いが中止になったり……縁がないんですかね?
    機会があれば行きたいです。機会、すなわち現行品万年筆を購入……
    ポメラはねー……
    >あかねさん
    初めまして、コメントありがとうございます。
    そう、時計をはめる腕は1本、万年筆を握る手も1本しかないんですよね……それに気付くまでにどれだけ時間が掛かったことか。そして万年筆に入れられるインクも一種類だと言うことに……
    手帳は格好いいから使いたいんですけど、私の後ろには二月くらいで書き込みがなくなった手帳たちが累々と……!
    ポメラはあんまり便利だとは思いませんでしたよ。仕事が仕事だけに一日中パソコン触ってるし、キーボードを打つよりは手書きで無地のノートに書き殴った方がアイデアが出やすいような気もするし。どうせならネットもできればいいのに、とか言い出したらきりがなくて……
    でもVAIOのポケットに入る奴の操作性がもう少し良かったら欲しかったかも。今はiPhoneが糒です……持ち歩く端末としてなら……外出先でネットなんかしませんが……

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